【辻語り】「現場を歩く──越前の伝統工芸から見える日本の文化力」

週末、大学時代の教え子たちが、また福井にやってきた

もちろんすでに社会人

東京からの教え子は初の福井

和歌山からの教え子は、昨年の一人旅に続いて2回目の福井だという

もちろん公務などがあったのでその合間だが、私にとっても現地視察を兼ねて2人を案内する

“ワビサビ“が好きな教え子たちなので、福井県内の伝統工芸や日本の技(選定保存技術)が一堂に会するイベントに行く

この夏から伝統工芸職人の皆さんの現場を課題聴き取りで回っていたから、出展してしている人は皆顔見知りだった笑

若狭名田庄の研炭と、小浜の桐油、敦賀のおぼろ昆布、越前箪笥に越前打刃物…どれも素晴らしい技の数々だ

とりわけ、このたびユネスコ無形文化遺産に登録見込みの「越前鳥の子紙」の実演はうなるものがあった

日本初の紙幣(明治新政府)に使われた越前和紙

その技巧は世界に誇るもので、「すかし」の技術も越前和紙職人が生み出している

「漉けない和紙はない」というほど多種多様な越前和紙

その中でも、「雁皮」という原材料にこだわったこの「越前鳥の子紙」は、極めて漉くのが難しいという

保存会の会長・職人でもある「やなせ和紙」工房にも伺わせていただいた

明治時代、いわゆる大蔵省(今の財務省)の紙幣工場「印刷局・抄紙部」がこの地にあった

その建物が、工房に使われていた!

今回は、工房での紙漉きは見れなかったがいつか見てみたい

日本唯一の紙を祀る神社「岡太神社・大滝神社」も訪れた

製紙業者や紙幣関係者の聖地でもある

そして「日本一複雑な屋根を持つ神社」としても有名で、デザイン関係者も多く訪れている

越前市周辺は、越前和紙だけではなく、越前打刃物、越前焼、越前漆器、越前箪笥など、1500年の歴史を持つ伝統工芸が息づいている

自然と共存する暮らしに裏打ちされ、手間暇をかけて生み出される価値

教え子2人は、その価値をたっぷり受け取った

「福井にまた行きたくなりました」「大好きな県」という感想を残して2人は帰っていった

先日、私は衆院文部科学委員会の質問に立った

越前市は「クラフト&フォークアート」の分野でユネスコ創造都市ネットワークに加盟が決まった

越前鳥の子紙を始めとした伝統文化を生み出す越前市について、大臣の所感を伺った

大臣には「多様な伝統工芸を生かしたコミュニティーの強化が評価され、大変喜ばしい。越前市の伝統工芸をしっかり国内外に発信していく」と答弁いただいた

このしっとりとした文化と価値を、今後も伝えていきたい


2025年11月30日  つじ英之

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